2021年11月29日
代表理事のご挨拶
CIRP JAPAN 代表理事 光石 衛
コロナ禍においても地球温暖化等の気候変動やカーボンニュートラルを始めとするサステナビリティへの取り組みに対する関心が高まっています.今,地球は,人間の活動が地球システム全体に影響を及ぼす地質年代である人新世(Anthropocene)に突入したといわれています.窒素循環,気候変動,生物多様性の損失については許容限界量を超えれば,復元不能な環境変化が生じる可能性があります.先日英国で開催されたCOP26では,世界の平均気温の上昇を産業革命前から1.5度に抑える努力をすることが明記されました.また,これまでにも2030年までに温室効果ガスの排出を半減しなければ,不可逆的な環境の壊滅が起こるという議論がされています.それまでに私達に残された猶予はわずか8年しかありません.しかし,現実を見ると,排出物に十分な注意が払われているとは言い難く,また,資源の無駄の山です.技術的には追及可能であるにも関わらず,対応が不十分な状況にあります.
ところで,人間が生きているのはフィジカル空間であり,物理的なモノはもちろんフィジカル空間に存在します.従来の機械はその空間内で人間社会,人間の活動に貢献するものでした.一方,知識や情報はサイバー空間に存在しています.現代では機械は情報を中心としたサイバー空間を作り出すのみならず,それらの情報から逆に機械の制御等を通じてフィジカル空間での多様な貢献を生み出すようになってきています.また,知識や情報を創出し活用する対象は第二次産業から第三次産業にシフトすればよいと考えるかもしれませんが,むしろ知識や情報を現実化する第二次産業へ適用する方が重要で効果も高いと思われます.学術の進展や研究開発においてはサイバーとフィジカルの両空間がダイナミックに刺激しあって発展させていくことが肝要です.
以上
一般社団法人CIRP JAPAN 代表理事 光石 衛